温泉地として長い歴史を持つ熱海には、別荘や旅館として長年使われてきた建物が今も残っています。昭和町にある起雲閣もそのひとつ。
もともとは別荘として建てられた起雲閣は、旅館へと生まれ変わり、志賀直哉や谷崎潤一郎、太宰治など、熱海を訪れた文豪たちにもゆかりのある場所。2000年に熱海市の所有となったことをきっかけに一般公開が始まり、現在では建物や庭園を見学できる文化スポットとして、多くの人が訪れています。
館内を歩くと、和館と洋館それぞれの趣だけでなく、ステンドグラスや床のタイルなど、当時の面影を残す細かな意匠にも目が留まります。建物の中を巡ったあとは庭へ出て、少し離れたところから建物を眺めるのも起雲閣らしい楽しみ方。
歴史を詳しく知らなくても、建物を眺めたり、庭を歩いたりしながら、熱海の昔の時間に触れられる場所です。
起雲閣で見ておきたい建物と庭
起雲閣の見どころは、建物そのものだけではありません。館内を歩きながら、部屋から庭を眺めたり、窓から差し込む光や建物の細かな意匠に目を向けたりすると、少しずつ違った表情が見えてきます。
和館の趣を感じながら歩く
和館に入ってまず目を引くのが、鮮やかな青色の「麒麟の間」。長い年月が過ぎているとは思えないほど色が残っていて、部屋に入った瞬間から目を奪われます。
室内は庭に向かって大きく開かれていて、部屋の中から外の景色を楽しめる造り。1階から庭を眺めるだけでなく、2階から見下ろすように庭を楽しむこともできます。
部屋をひとつずつ見るというより、家の中を散策するような感覚で歩いてみると、部屋ごとの雰囲気や庭とのつながりも楽しめます。
光と細部を楽しみたい洋館
洋館も、光の入り方に目を向けながら歩きたいところ。採光のためのガラスが多く使われ、ステンドグラスになっている部分からは、時間帯によって違った表情の光が差し込みます。
なかでも目を向けたいのが、洋館「玉姫」やサンルームに使われているタイル。昭和7年に完成した「泰山タイル」で、職人が一枚ずつ手作りしたものだそうです。同じものがひとつとしてないというのも面白いところ。少し近づいて、色や模様の違いを眺めてみると、建物の細部まで楽しめます。
タイル張りの床や歴史を感じさせるガラス、当時の雰囲気を残す調度品など、近くで見ると細かなところにも目が留まります。一方で、家具や調度品を少し離れたところから眺めてみると、それらが置かれた部屋全体の雰囲気から、当時の暮らしを想像する楽しみもあります。
ひとつひとつを詳しく知ろうとするより、気になったものの前で少し立ち止まり、そこから部屋全体を眺めてみる。そんなふうに視点を変えながら歩くと、洋館の雰囲気をより楽しめます。
部屋から眺める庭も起雲閣の楽しみ
起雲閣では、庭に出るだけでなく、部屋の中から庭を眺める時間も楽しみたいところです。窓の向こうに広がる庭は、見る部屋によって少しずつ表情が変わり、館内を歩きながら「この部屋からはどんな景色が見えるのだろう」と眺めてみるのも面白いところ。
建物を一通り見て回るだけでなく、窓辺で少し立ち止まって庭を眺めてみると、部屋と庭が一緒になった起雲閣ならではの空間を感じられます。
庭から建物を眺めてみる
館内を見たあとは、庭に出て建物を振り返ってみるのもおすすめです。
庭から眺めると、和館と洋館が入り混じった少し不思議な建物の姿が目に入ります。整然とした一つの建築というより、長い時間の中でさまざまな使われ方をしてきたことが感じられるような佇まい。館内で見るのとは違った角度から建物を眺めることで、起雲閣の歴史にも少し興味が湧いてきます。
写真を撮るなら、建物から少し離れすぎず、やや低い位置から見上げるようにすると、建物と空を一緒に収めやすくなります。背景にある現代的な建物も目立ちにくくなるので、起雲閣らしい雰囲気を残した写真を撮りたいときにも試したい撮り方です。
歴史を思いながら巡る
1919年に実業家の別荘として建てられた起雲閣は、1947年から旅館として使われるようになりました。2000年からは一般公開され、現在は観光で訪れた人も館内を見学できます
起雲閣の歴史について詳しく知りたいなら、館内の常設ガイドの話を聞いてから巡るのもおすすめです。建物の由来や、ここで過ごした人たちの話を知ってから部屋や庭を眺めると、同じ景色でも少し違って見えてきます。
「この部屋でどんな時間を過ごしていたのだろう」と想像しながら、庭や装飾、家具などに目を向けてみる。歴史をすべて覚えてから訪れるのではなく、現地で話を聞きながら、その時代に思いを巡らせてみるくらいがちょうどいいのかもしれません。
どのくらい時間を取っておく?
起雲閣の見学時間は40〜60分ほどが目安。館内を一通り見て回るだけなら1時間ほどでも十分楽しめますが、ガイドの方のお話を聞いたり、庭や細かな装飾を眺めたりするなら、少し余裕を持っておきたいところです。
また、写真を撮りながら巡るのも起雲閣の楽しみ方。建物や庭を写真に収めようとすると、普段なら通り過ぎてしまうようなガラスやタイル、家具の細部にも自然と目が向きます。気になるところで立ち止まりながら歩いていると、思ったより時間が過ぎているかもしれません。
実際にじっくり見て回るなら、カフェで休憩する時間まで含めて1時間半ほど見ておくのもよさそうです。短時間で効率よく巡るより、気になった場所で足を止めながら過ごすと、起雲閣の細かな魅力にも気づきやすくなります。
こんな過ごし方が向いている
起雲閣は、短時間で見どころを巡って次の観光地へ向かうより、少し時間を取ってゆっくり過ごしたいときに向いています。海岸周辺の街歩きに組み込みやすく、市内を歩いた途中でひと休みする場所として立ち寄るのもおすすめです。
建物を見るのが好きな人はもちろん、写真を撮るのが好きな人にも楽しみやすい場所。館内を歩きながら写真を撮ろうとすると、ステンドグラスや窓ガラス、タイル、家具など、普段なら通り過ぎてしまいそうな細かな部分にも自然と目が向きます。
また、暑い日や寒い日に街歩きの途中で少し休みたいときにも使いやすく、館内のカフェでひと息ついてから再び歩き始めるというのも散策のコツ。
雨の日なら、館内から雨に濡れた庭を眺めながら静かに過ごすこともできます。詳しい雨の日の過ごし方は、別の記事で紹介しています。
一方で、静かに建物や庭を眺めながら過ごす人が多いので、小さなお子さんとにぎやかに楽しみたい場合には少し物足りないかもしれません。
晴れた日に訪れたなら、ぜひ館内に差し込む光にも目を向けてみたいところ。ステンドグラスや窓ガラスを通った柔らかな光の中にいると、ここが長く人に愛されてきた旅館だったことにも、少し納得できるような心地よさがあります。
起雲閣へ歩いて向かう
熱海駅から起雲閣までは徒歩で約20分。駅から向かう場合は下り坂が続くため、行きは比較的歩きやすい道のりです。ただ、起雲閣だけを目的地にして駅から往復するよりも、海岸方面の街歩きと組み合わせるほうが楽しみやすいでしょう。
時間に余裕があるなら、熱海駅からいったん海まで下り、海岸の遊歩道を歩いてから起雲閣へ向かうのがおすすめです。海を眺めながら熱海の街を歩き、30〜40分ほどかけて起雲閣へ向かえば、移動そのものも観光の時間になります。
帰りは逆に上り坂が続きます。起雲閣を出たあとは銀座商店街へ向かい、途中のお店をのぞきながら熱海駅へ戻るルートなら、坂道だけをひたすら歩くよりも楽しみながら帰れます。急いで駅へ戻る必要がなければ、帰りは30分ほど余裕を持っておくと安心です。
INFO
施設・会場詳細
起雲閣
- 営業時間
- 9:00~17:00 (*16:30最終入館)
- 定休日
- 水曜日/12月26〜30日
- 電話番号
- 0557-86-3101
- 住所
- 静岡県熱海市昭和町4-2
- 利用料
- 大人:610円・中高生:360円・小学生以下無料
- 備考
- 事前予約:必要なし


